【韓国の展示に参加します】「from three Borders」@우연갤러리(ウヨンギャラリー)、쌍리갤러리(サンリギャラリー)

日・韓・米の作家の国際交流展「from three Borders」に出品します。現代版画が中心の展示です。
3年を通して開催される巡回展で、今年は韓国・大田(テジョン)からスタート。
来年は日本、再来年はアメリカ・ニューヨークへと続きます。

今回は大田市内の2つのギャラリーでの開催です。
数年前はコロナで行けなかったのですが、今回は私も現地に遊びに行きます。海外に行くのも久しぶり☺️

どんな出会いや刺激があるか、今からとても楽しみです🇯🇵🇰🇷🇺🇸

今回も少し文章を書きました。
こういう内容を書くと、時々「なんだか偉そう」と言われてしまうことがあります。
たぶん、論文調だったり、海外の学者の名前を出したりすると、少し堅く聞こえるからでしょうね。

でも、「版画と複製」や「芸術とは何か」といったテーマをまじめに書こうとすると、どうしてもベンヤミンを避けては通れません。
むしろ彼に触れないほうが、かえって不誠実な文章になってしまう。
「この話はこの文脈で考えています」と示すための、最低限の枠組みとして必要なことです。

それに、私たちが版画を通して表現していくとき、意識していようといまいと、その多くはヨーロッパの芸術観の流れの中にあります。良し悪しという話ではなく、まずその背景を理解したうえで考えていくことが大切だと思っています。

それから単純に、私は文章を書くのがあまり得意ではありません。
上手に表現するのが苦手で、だからこそ「論文」という形式に助けられてきたところがあります。
論文は文体が決まっているので、文才がなくても形にできる!
その点が、私にとって少し心強いところなんです。


ベンヤミンは「技術的複製が可能になった時代」に、芸術作品の本質や社会的機能がどのように変容するのかを考察した。彼は、複製技術の発展によって、芸術作品が本来もっていた「アウラ Aura」——すなわち、一点物としての「ここにしかない」時間性・空間性、そして権威性——が失われていくと論じている。

一方で、技術的複製がもたらす転換は、同時に芸術の民主化として肯定的に受け止めることもできる。かつては貴族や富裕層だけが所有できた優れた美術作品が、版画というメディアを通して、多くの人々のもとへ届くようになったからだ。版画は、芸術を特別な人のためのものから、すべての人に開かれたものへと変えてきた表現である。少なくとも、私たちが志してきた「芸術版画」という営みは、そのような喜ばしい変化の中にあった——そう言い切れる時代が、たしかにあったのだと思う。

しかし、現代ではその様相は再考されるべきだと私は考えている。スマートフォンを通じて、SNSやネットワーク上で画像が瞬時に共有され、生成と同時に広がっていく。いまや「複製」と「同時性」はほとんど同義になりつつある。現代のネットワーク環境において、「複製」という言葉が示すものは、「たくさんある」という量の問題ではなく、「同時に共有される」という時間の問題に近づいている。そのとき、私たちは極めて難しく、そして避けがたい問題に直面しているのではないだろうか。

芸術としての版画は、技術的複製の特異点としての現代に、どのようなポジションを占めているのか。そして、そもそも芸術と複製とは、いまどのような関係にあるのか。

私は、その問いに向き合うために、一点ものの版画や、素材そのもののテクスチャーを生かしたコラグラフに取り組んでいる。版を通して、素材や手の働きの中に感性を立ち返らせ、偶然の中に生まれるかたちを見つめ、それをもう一度画面の中で必然へと構成していく。この過程こそが、いま作品をつくる私にとって、「版画」という行為の意味になっている。(内藤瑶子)

展覧会情報

 from three Borders(日韓米展)

📍우연갤러리(ウヨンギャラリー)
2025年11月6日(木)– 11月12日(水)
187-2 Daeheung-dong, Jung-gu, Daejeon
Tel:+82-42-221-7185(韓国)

📍쌍리갤러리(サンリギャラリー)
2025年11月6日(木)– 12月30日(火)
46 Jungang-ro 130beon-gil, Jung-gu, Daejeon
Tel:+82-42-253-8118(韓国)

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